平岡公彦のボードレール翻訳ノート

ボードレール『悪の華[1857年版]』(文芸社刊)の訳者平岡公彦のブログ

2025-01-01から1年間の記事一覧

『悪の華』の謎を解く3――ハイデガーの郷愁とノヴァーリスの夜

――そりゃそうかも知れないが!……一枚のタブローの詩とは、見る者によって作られなければならないものなのだ。 ――一詩篇の哲学が読者によって作られなければならぬように、というわけだね。――その通り、まさにそうなんだ。――ボードレール「L・ド・セヌヴィル…

『悪の華』の謎を解く2――ディオニュソスの鏡とパスカルの深淵

深淵 シャルル・ボードレール/平岡公彦訳 パスカルは、彼について動く深淵をもっていたという。 ――うう! みな淵獄だ。――行動も、欲望も、夢も、 言葉もだ! 見えるたび、まっすぐよだった身の毛を、 幾度も恐ろしさが風となって通り過ぎるのを感じよう。 …

ボードレール『悪の華』韻文訳――017「美(1861年版)」完全解読(下)

ボードレールの「美」とは、『悪の華』という美術館に特設されたウェヌスのギャラリーである。そこに展示されたウェヌスのコレクションには、古代ローマ帝国の母神、売春婦の守護神、レズビアンの守護神という三つの顔があり、「美」にはそのそれぞれに由来…

ボードレール『悪の華』韻文訳――017「美(1861年版)」完全解読(上)

美(1861年版) シャルル・ボードレール/平岡公彦訳 わたしは美しい、おお、死すべき者よ! 石の夢のように。 だれもが代わるがわる打ち傷を負っていったわたしの胸も、 詩人の魂に愛を吹きこむために作られたのよ。 永遠の声なき愛を、万有の質料と同じよ…