平岡公彦のボードレール翻訳ノート

ボードレール『悪の華[1857年版]』(文芸社刊)の訳者平岡公彦のブログ

哲学

國分功一郎の奇説――國分功一郎「傷と運命――『暇と退屈の倫理学』新版によせて」を読む

久しぶりにブログを更新する気になったので、今年3月に刊行された哲学者の國分功一郎の『暇と退屈の倫理学 増補新版』(太田出版)の書評を書くことにしよう。 暇と退屈の倫理学 増補新版 (homo Viator)作者:國分 功一郎発売日: 2015/03/07メディア: 単行本…

哲学と文学の距離――いとうせいこう/千葉雅也「装置としての人文書――文学と哲学の生成変化論」を読む

前々回、千葉雅也の『動きすぎてはいけない――ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』(河出書房新社)の書評の続きを書くと予告してから、またしてもずいぶんと間が空いてしまった。 動きすぎてはいけない: ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学作者: 千葉雅也出版…

切断の原理と肯定――千葉雅也『動きすぎてはいけない――ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』を読む2

前回の『動きすぎてはいけない――ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』(河出書房新社)の書評を著者の千葉雅也さんご本人が読んでくださったようだ。おかげでやる気が出たので、続きを書いてみた。 動きすぎてはいけない: ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学作…

千葉雅也の問題作――千葉雅也『動きすぎてはいけない――ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』を読む1

紀伊國屋書店が主催する「紀伊國屋じんぶん大賞2013――読者と選ぶ人文書ベスト30」の大賞を受賞した哲学者の千葉雅也のデビュー作『動きすぎてはいけない――ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』(河出書房新社)を読んだ。 動きすぎてはいけない: ジル・ドゥル…

哲学を捨てる勇気――國分功一郎『ドゥルーズの哲学原理』を読む2

前回は、哲学者の國分功一郎の『ドゥルーズの哲学原理』(岩波現代全書)第Ⅲ章までのドゥルーズ論を読んできたので、今回は第Ⅳ章以降のドゥルーズ=ガタリ論を読んでいくことにしよう。 ドゥルーズの哲学原理 (岩波現代全書)作者: 國分功一郎出版社/メーカー…

克服すべき失敗作――國分功一郎『ドゥルーズの哲学原理』を読む1

哲学者の國分功一郎によるドゥルーズ論『ドゥルーズの哲学原理』(岩波現代全書)は、『思想』の連載で全部読んでいたので、単行本で新たに書き足されたところをざっと読んで放置していた。 ドゥルーズの哲学原理 (岩波現代全書)作者: 國分功一郎出版社/メー…

納富信留の迷解説――プラトン『ソクラテスの弁明』を読む

光文社古典新訳文庫からプラトン研究者の納富信留によるプラトンの『ソクラテスの弁明』の新訳が刊行されたので、久しぶりに読んでみた。ちょうどなにもかも一からやり直したいと思っていたところだったから、いい機会だったと思う。 ソクラテスの弁明 (光文…

哲学は役に立つか――プラトンの倫理学3

「人はいかに生きるべきか」という問いは、人が生涯をつうじて絶えず問い直すべき問いである。そう言明する者には、求道者としての高潔さや矜持さえ感じられるかもしれない。だが、この問いを問う者が、いつまでもみずからの生き方を決められずにいるとすれ…

倫理と人生の目的――プラトンの倫理学2

人はいかに生きるべきか。プラトンの『ゴルギアス』において、ソクラテスが「少しでも知性をもつ人間をそれ以上に真剣にさせる問題は存在しない」と断言したこの問いから出発する哲学書や倫理学書は無数に存在する。 プラトン全集〈9〉 ゴルギアス メノン作…

プラトンの偉大さ――プラトンの倫理学1

哲学を学ぼうと考える人がプラトンの対話篇を手に取ることは、いくつかある哲学へのよい入口の一つではなく、考えうる最良の入口である。そして、みずから哲学することをはじめたければ、人はできるだけはやくプラトンの対話篇と出会い、ソクラテスをはじめ…

ハイデガー超入門――『暇と退屈の倫理学』をめぐる國分功一郎さんとの質疑応答2

哲学者の國分功一郎さんに再度した『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社)についての質問のお返事を待っているあいだに、ちょっとハイデガーの哲学を復習しておこうと思います。 暇と退屈の倫理学作者: 國分功一郎出版社/メーカー: 朝日出版社発売日: 2011/10/1…

ハイデガーと決断――『暇と退屈の倫理学』をめぐる國分功一郎さんとの質疑応答1

昨年哲学者の國分功一郎さんにした『暇と退屈の倫理学』(朝日出版社)についての質問にご回答をいただきました。非常にご多忙にもかかわらず、時間をかけて真剣に答えてくださったことがわかる長文の論考に感動しております。ほんとうにありがとうございま…

概念の創造の実践――國分功一郎『スピノザの方法』を読む

「それではこの神のことを、われわれは、その寝椅子の『本性(実在)製作者』、または何かこれに類した名で呼ぶことにしようか?」 ――プラトン『国家』*1 哲学者の國分功一郎の博士論文であり、初の著書でもある『スピノザの方法』(みすず書房)のテーマは…

概念の創造の方法――國分功一郎「ドゥルーズの哲学原理(1)」を読む

ジル・ドゥルーズの哲学は、なによりその難解さで悪名高い。とりわけフェリックス・ガタリとの共同執筆を開始してからのテクストは、もはやそこでなにが論じられているのかさえわからないと匙を投げる人は専門の哲学研究者のなかにさえ多く、あげくの果てに…

知の公共圏の構築――今こそ梅田望夫『ウェブ時代をゆく』を読み返す

書くことは抵抗すること。書くことは生成すること。書くことは地図を作ること。 ――ドゥルーズ『フーコー』*1 なんのためにブログを続けるのか。そう自問するとき、いつも読み返したくなる本がある。梅田望夫氏の『ウェブ時代をゆく――いかに働き、いかに学ぶ…