2023-01-01から1年間の記事一覧
旅のボヘミアン(1861年版) シャルル・ボードレール/平岡公彦訳 熾烈に瞳を燃え立たせた予言者たちの部族は、 昨日旅路についた。一行の女たちはてんでに 小さな子をおぶったり、その見上げた食欲に、 垂らした乳に常備した宝を委ねたりしていた。 彼女ら…
前世(1861年版) シャルル・ボードレール/平岡公彦訳 私は長いあいだ、海辺の太陽が千の火で 染め上げた広大な柱廊の下に住んでいた。 その大きな柱は、まっすぐ厳かに並んで、 夕暮れは、玄武岩の洞窟と同様に見えた。 大空の姿を映して巻きこむ波のうね…
不遇(1861年版) シャルル・ボードレール/平岡公彦訳 これほど重い重石を持ち上げるとなると、 シシュフォスよ、汝の勇気が必要だろう! よくよく作品に心をこめようと、 芸術の道は長く、時は短かろう。 名立たる墓所からは遠く離れた、 孤立した墓地のほ…
われわれの身に起こる数々の善きものの中でも、その最も偉大なるものは、狂気を通じて生まれてくるのである。――プラトン『パイドロス』*1 闇が光の欠如であるなどというのは迷信である。闇とは、殊に人間精神に潜む闇とは、開花を待つ豊穣な潜勢力を秘めた領…
宗教というものについて、ボードレールは『火箭』の冒頭に、「たとえ神が存在しないとしても、〈宗教〉はやはり〈神聖〉かつ〈神々しい〉ものであるだろう」*1という有名なテーゼを遺している。おそらくこれは、サド侯爵のキリスト教批判へのボードレールの…
シャルル・ボードレールの韻文詩集『悪の華』は、ニーチェの『ツァラトゥストラ』と同じく、キリスト教の『聖書』の知識がないと、なにが書かれているかを充分に読み説くことが難しい書物である。 韻 文 訳悪 の 華シャルル・ボードレール平岡公彦訳トップペ…
韻 文 訳悪 の 華1861年版シャルル・ボードレール平岡公彦訳© 2021-2024 Kimihiko Hiraoka