平岡公彦のボードレール翻訳ノート

ボードレール『悪の華[1857年版]』(文芸社刊)の訳者平岡公彦のブログ

読書

ボードレールと三島由紀夫――三島由紀夫『潮騒』について

前回韻文訳を公開した、シャルル・ボードレールの『悪の華』の5番めに収録されている無題詩は、三島由紀夫にとっての『潮騒』(1954年)のような作品だったのではないかと私は考えている。 潮騒 (新潮文庫)作者:三島 由紀夫新潮社Amazon 三島由紀夫も、代表…

2013年最高の収穫――アミュー『この音とまれ!』を読む

2013年はまだ半分ちょっとが過ぎたところだが、今年私が見つけた最高のマンガはアミューの『この音とまれ!』(ジャンプ・コミックス)でもう確定のようだ。これだけ夢中になれる作品にはそうそう出合えるものではない。 この音とまれ! 1 (ジャンプコミック…

まだまだある誤訳――ボードレール『悪の華』の邦訳の誤訳について2

「どの翻訳を選ぶか――ボードレール『悪の華』の邦訳の誤訳について」がずいぶんと好評だったので、調子に乗ってもう少し続きを書くことにしよう。幸か不幸か、ボードレールの『悪の華』の誤訳についてはまったくネタに不自由することがない。すでに『悪の華…

音楽のない思春期――押見修造『惡の華』を読む

前回のボードレールの『悪の華』の堀口大學訳をはじめとする既存の邦訳の誤訳を解説した記事に予想外の反響をいただき、驚いている。押見修造の『惡の華』(講談社コミックス)の影響力は私が思っていた以上にすさまじかったようだ。 惡の華 (8) (講談社コミ…

どの翻訳を選ぶか――ボードレール『悪の華』の邦訳の誤訳について

今年アニメ化された押見修造の『惡の華』(講談社コミックス)のおかげで、ボードレールの『悪の華』にふたたび注目が集まっているようだ。訳者の一人として、喜ばしく思う。 惡の華(1) (少年マガジンKC)作者:押見 修造講談社Amazon 押見の『惡の華』は読ん…

知の公共圏の構築――今こそ梅田望夫『ウェブ時代をゆく』を読み返す

書くことは抵抗すること。書くことは生成すること。書くことは地図を作ること。 ――ドゥルーズ『フーコー』*1 なんのためにブログを続けるのか。そう自問するとき、いつも読み返したくなる本がある。梅田望夫氏の『ウェブ時代をゆく――いかに働き、いかに学ぶ…